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12月11日

アンとの再会

なつかしい人とばったり街角で会う事がたまにある。
しかし今日のそれは一味違う。

彼女の名前はアン。
2001年夏、僕と同じく彼女は一人でアラスカを旅していた。
彼女は大きなバックパックを足でこつきながらキナイ半島へ向かうシャトルバスが来るのをじっと待っていた。
バス停で待っているのは僕達だけだったので自然に話しを始めた。
今から訪れる見知らぬ土地についてや自分の住んでいる街のことを話した。
そしてアンがモン・マルトルに住んでいる事がさらに彼女の身のこなしを印象付けた。

 彼女との旅は2時間ほどで終わりを迎え、僕は途中目的地でバスを降りた。
連絡先を聞かなかった事をバスの窓越しに手を振る彼女を見送りながら悔やんだ・・・。


 2年後の9月。ブリュッセルの街は新学期を迎える学生達で賑やかだった。
信号が赤から青に変わろうとした瞬間、隣に立っているその人を何気なく見た。
どこか見覚えのある顔。


まさか・・・。
 
 アンはパリの大学から最後の一年をベルギーの大学で勉強するために数日前ベルギーに引越して来たばかりだった。
僕らはあの日、バスを降りた後どんな旅をしたのかを語り合った。僕はグリズリーに出会った話や氷河の大きさについて語った。
彼女はネイティブ・アメリカンの文化をテーマにした論文を書くために一度帰国し、冬の6ヶ月をインディアンの小さな村で過ごした話をしてくれた。
その後何度か一緒にカフェに行ったりしたけれど、今アンが何処で何をしているのかは知らなかった。

 
 今日の撮影は思う様に行かず、冷たい雨の中冴えない気分で家路についた。
乗り換え駅でメトロが来るのをあの日バスを待っていた様にコツコツと床を蹴りながら待っていた。
そして何気なく同じように待っている隣の人を見た。



「アン・・・。」


 僕らは3年ぶりの再会をまたしても偶然にやってのけたのであった。
そしてあの後どんな風に過ごしているのかを揺れるメトロの中で話した。
そして同じ駅で降りた。同じ町内に住んでいるらしかった。今まで出会わなかった事が滑稽で可笑しかった。
小雨が降る中、次の再会を誓い彼女の背中を見送った。
出来れば偶然の方が面白いと思いながら・・・。
                   
                                  おわり
 
 
あとがき
こうやって文章にすると嘘みたいな話ですが全部本当の話です。
これに似た話でフィレンツェで出会ったおっさんがブリュッセルの街角で靴磨きをしていて
その休憩中にばったりカフェで再会というのもありましたが、これはドラマになりそうにないので書いていません。
あしからず。
 
浜風編集チョー