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6月30日

アヌシーからの風 2 「お富上映」

 メインとなる会場にはすでに多くの人が列を作っていた。 まず我々の作品「お富」の含まれているコンペティション3を見ることにした。

会場内は上映前から異様な盛り上がりを見せており、かなりのお祭り気分だ。

僕の印象ではヨーロッパの短編アニメーションは、見る人も作る人も基本的に

絵画をやる人と同じ層の人たちでインテリ系が多いような気がする。

そんな大人達がはしゃぐのがこの年に一度のアヌシーなのだ。

子供はほとんど居なかった様に思う。

 

 うわさに聞いていた通り紙飛行機が会場内を飛び交っていた。

先っちょの尖った紙飛行機が前に座っている薄毛のおじさんの後頭部に直撃して、 かなり痛そうだった。血は出てないみたいだけど・・。

折り紙王国代表選手としていくつか飛ばしてみたけど自慢できるほどの物ではなかった。 来年はもっと勉強しておこう。

 

「お富」の上映はコンペの中で一番最初だった。

観客のみんなが一番集中して見てくれるのがいい。まさか一発目から寝る人もいないだろうしね。

何度も見ている「お富」だがここにきてドルビーミックスの効果が最大限に発揮された。 セリフと効果音と音楽のバランスもいい感じ、それにやっぱり大画面はいいよね。

 

パチパチ パチパチ パチパチ

 

拍手の後司会者が僕とウィリアムをステージの上で紹介した。

ウィリアムと僕は日本風のお辞儀をして、どちらが先に舞台を降りるかを日本風に譲り合い 最後はウィリアムが僕を突き落としてオチをつけるコントで会場を笑わせた。

作品がシリアスなだけにいい演出だったと思う。

 

 同じコンペティション3の中にもう一人日本人の方が出品されていた。

作品名は「侍モンスター」 3Dコンピューター作品でロスで制作されているようだった。 その監督さんとお話をしたかったけど、僕らは今夜ビーチで催される

パーティーの招待券をもらうために受付へと向かった。

アヌシー3へ続く

 

アヌシーからの風 1 「水の都・アヌシー」

 
  ブリュッセルより長距離バスで13時間ようやくフランスのアヌシーに到着した。
この長距離バス、慣れてはいるものの結構つらい・・・。
 
アヌシーの宿で待ち構えていてくれたのは、同じくベルギーのアニメプロダクション「子供カメラ」の若手アニメーターの面々。男子2名に女子4名。
 
「こどもカメラ」はベルギー南部の街リエージュで子供のためのアニメーションを作っているプロダクションで今回泊まらせていただくアパートを毎年借りているらしい。
台所もあり食事も当番製で作る事になった。
 
「同じ釜の飯を食うと」言う言葉もあるように、僕らはすぐに打ち解けた。
 
 
 早速マリー・ルイーズがアヌシーの旧市街を案内してくれる事になった。
アヌシーはアルプスの玄関口にあたるリゾート地。
街に隣接する湖が驚異的に澄んでいる。
太陽の光が水の中をどんどん突き抜けて、湖底の白い砂をはっきり映し出していた。
 
 マリー・ルイーズは昨年のブリュッセル・アニメーション・フェスティバルの受賞者でもありヨーロッパの
アニメ事情に通じている。
彼女いわく「アヌシーは作品のレベルもさることながら、来ている人たちが面白いわ。」
と湖のみなもの様にキラキラと瞳を輝かせた。
 
桟橋からそっと手を伸ばし水をすくうとアルプスからの雪解け水である事がすぐに分った。
マリー・ルイーズは水着を持ってきたのに・・・と少し残念そうに言った。
そしてサングラスをかけると空を見上げた。
 
僕達は木陰に沿ってやわらかい芝生の上を素足で歩きながらメインとなる会場へと向かった。
これから始まる出会いと作品に胸を弾ませながら。
 
                                
アヌシー2へ続く