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July 05 アヌシーからの風 9 「日本語特訓」マリールイーズはいつに無くうれしそうだった。
「今日私の彼、セバスチャンがくるの。」また目をキラキラさせた。
セバスチャンはフォリマージュのアニメーター。フォリマージュと言えば無く子もだまるヨーロッパのアニメーションの代名詞的プロダクションで、数々の短編アニメーションをフェスティバルに送り込み次々と受賞をものにしている。今回のアヌシーでも特別プログラムが組まれているほどの人気だ。
以前いくつかフォリマージュ作品を見たが「動いている絵本」というのが僕の第一印象。筆あとの残る淡い水彩画タッチの絵が見事に動いていく。
セバスチャン登場!
いきないり「コンニチワ!」アジア風の黄色い長袖シャツに、日焼けしたひげ面。プロバンスからきたというよりインド帰りと思うくらいのカジュアルな感じ。
それに今コンニチワって言ったような気がするが・・・。
いきなりセバスチャンは言った。
「日本語おしえてください。」
「えっ・・なんで?」
話を聞くと近々日本のジブリからお客さんが来るらしく。それまでに日本の事を勉強しておこうと言うのである。僕は偉いと思った。フランス人が日本の習慣に自分を合わせようとしている所がである。
「ほんじゃまずは、ステップ1!名刺交換。」
「サバ?」
「ウイ!」
「ただ渡せばいいってもんじゃないよ。これには秘訣があってお辞儀をするときの姿勢、名刺を渡すときの絶妙のタイミングと方法、その時に口にすべき言葉など、全ては古来の儀式に起源を発する一種の「型」をもってるんだ。
日本ではまずこの「型」を知っているかどうかが大切で、それでその人となりを判断するバロメーターになってるんだ。この「型」を学ぶプロセスは小学校に入って漢字を勉強する時、筆順を徹底的に習得してその通りに書かないとテストで良い点はもらえない。そういう風に「型」をマスターした物は先輩そして師として尊敬され、学ぶ側は師の指導に従って黙々とその「型」を学ぶんだ。これが日本人の精神風土の土台の一つであーる。日本人とビジネスする時はこの「型」の習得が第一歩であーる。
「分ったかっ」
「はいっ!」
「よーしっ!まずは名刺の差出し方からだ。両手で名刺の両角を持ち、相手に読める向きにして渡す。この時に15度程度の軽いお辞儀をする。このお辞儀が深すぎても早すぎてもダメなんだ、軽く15度。」
「じゃーやってみよう」
「ダメダメ!首だけじゃなーい!腰からだ!腰から背筋をピーンと伸ばーしそのまま前に。この時視線は落としたままだ。間違っても上目遣いでみるんじゃないよ。」
「まぁいいだろう。」
「よーしステップ2!受け取った名刺は良く見る。このとき仮に字が読めなくても見る。心眼でよみとるんだ!わかったか!」
「いいぞ いいぞ その調子 その調子!」
映画「ベスト・キッド」の師範ミヤギになりつつある浜風編集チョー。
「よーしステップ3!頂いた名刺はすぐにしまわずテーブルがある時は右横の置いて何時でも見えるようにする。立っている時はポケットにや財布に入れず名刺入れに入れる事。間違っても名刺の裏をメモ代わりにするんじゃないよ。」
「よしよしいい感じ いい感じ。」
そんな僕達の姿をマリールイーズは不思議そうに眺めていた。やはり日本はまだまだ極東の神秘の国なのである。
セバスチャン健闘を祈る!
PS 長い海外生活で日本のしきたりを忘れつつある僕。海外で日本人の方にお会いしたときに
いきなり握手を求めてしまう時がある。自然に体がそう動いちゃうのである。アヌシーで出会った方々、もし失礼な事してたらごめんなさい。この場をかりて。
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